2019年もあと1日。というわけで、今年の歌声合成ソフト界隈であったニュースをまとめてみます。今年もいろいろあったんですよ。「大賞」とかタイトルつけてますが、どれが1番とかは特にありません。
2019年に起きたこと
このブログは基本的に技術寄りのコンシューマー向けなので、文化・学術系の話題は拾ってません。
VOCALOID
ヒメミコ
今年はガイノイドさんがV5音源「鳴花ヒメ・ミコト」を発売しました。去年出たV5ですが、音源は今だ2つのみと動きが少ない印象。
価格的な意味で導入ハードルが上がったVOCALOIDですが、ヒメミコのキャラ人気は見た感じ好調な様子。VOCALOID動画がすごく投稿されているという感じはないので、音源が売れてるわけではないと思う(あくまで想像)。
Piapro Studio
初音ミク NT
今年最も衝撃を与えたニュースの一つが「VOCALOIDじゃない初音ミク」の登場ですね。クリプトンさんが「次のミクはVOCALOIDじゃなくてPiapro Studio専用音源になる」と発表して「ボカロの代表たる初音ミクがVOCALOIDじゃなくなるだと!?」と大きな話題になりました。
12月25日には、次世代ミクの製品名が「初音ミク NT」であることや、Piapro Studio for NTの仕様がちょっと公開されました。
3月にはプロトタイプ版、8月には正式版が出るらしいので、来年も見逃せません。
UTAU
64bit版UTAU-Synth
UTAUで今年一番大きかったのは「Mac OSがカタリナになり、32bitアプリをサポートしなくなったので、UTAU-Synthが動かなくなった」ことですかね。
もっとも、数日内に64bit版UTAU-Synthを飴屋さんが作ってくださったので大きな問題にはなりませんでした。神対応。
Gakuya
デルタさんが公開したUTAU音源パッケージングソフト「Gakuya」は、作った音源を配布に適する形にパッケージしてくれる。
2011年製の「NAKAHOSA」と同カテゴリーのソフト。これがあれば、Install.txtを作るときにうまくいかなくて困るとかいうことが亡くなって非常に良い。
UTAU音源インストーラーメーカー
まいこさんが公開したUTAU音源パッケージングソフト「UTAU音源インストーラーメーカー」は、UTAU音源のインストーラーを作れるソフト。
UTAU音源は普通、ZIPやUARといったファイルとして配布する。まいこさんのソフトを使えば、分かりやすい操作で正しい場所に音源をインストールできる上、規約に同意しないと音源を使えないようにできるので確実にルールを守ってもらいたい中の人にはうれしい。
CeVIO
CS7
CeVIOの大型アップデートがあり、最新版のCS7が公開されました。
ソング機能では、曲中自由に描けるジェンダーパラメーターが実装されて表現力が上げられるようになりました。英語歌詞の自動音節分割機能は一部IA ECユーザーにバカ受け。
トーク機能では、アクセント句の分割/結合機能が使えるようになりました。もともと強く求められていた機能だったというのもありますが、ショートカットもなくクリックだけで切ったりつなげたりできる仕様があまりにも神過ぎてすばらしい。
VOICEROID
VOICEROID10周年
VOICEROIDは今年で10周年だったようです。記念の公式イベントでは、低音男声ボイロや英語版ボイロが出せそうという話や、APIの提供などが発表され、2020年に向けた準備が着々と進んでいる様子が垣間見えました。
ついなちゃん
CV:門脇舞以さんの関西弁ボイロ「ついなちゃん」が発売されました。標準語もしゃべれる。
クラウドファンディングで実現した企画。公式Twitterが今時の良くしゃべる企業系アカウントっぽい。
ガイノイドTalk
ヒメミコ
鳴花ヒメミコは、歌声合成音源はVOCALOID5、話声合成音源はガイノイドさんのTTSソフト「ガイノイドTalk」用音源として出ました。結構クオリティーがいい。
ふらわー
v-flowerのオンリーイベント「両手いっぱいの花束を君へ」で、v-flowerのTTSが展示されていた模様。出るかどうかわからないけど、出たら絶対かなり売れる。
ガイノイドさんが動画いいって言ってたもん!#v_flower#花君 #EofV pic.twitter.com/pREHdKp7Z7
— まがたまも (@magatamamo) October 5, 2019
AIシンガー
今年1番アツかったのはやはりAIシンガー。
NeoCeVIO
CeVIO陣営が2018年末に公開したAIシンガーを私は個人的に「Neo CeVIO」と呼んでいます。DTMステーションさんは世界初のAIシンガーCDと銘打って、Neo CeVIOの音声を使ったCDを売り出しました。
CDが出たころはそこそこのPCでそこそこの時間をかけて音声を合成していたようですが、最近は普通のノートPCで普通に合成できるようになったらしい。
ビジネス的な面がうまくいけば来年にも発売してくれるんじゃないかと思ってますが、ビジネス的な面がうまくいくかどうかは一切分からない。
りんなメジャーデビュー
日本マイクロソフトの「りんな」は去年、目覚ましい進化を見せましたが、今年はエイベックスからメジャーデビューしました。
技術的な意味でもすごいんですが、AIシンガーがプロ歌手になったってちょっとしたシンギュラリティ―。
活動内容としては、カバーシングルを発表している感じ。
AI美空ひばり
おそらく、世間的に今年最も注目度が高かったのはヤマハさんの「AI美空ひばり」でしょう。

AI技術を活用して故・美空ひばりさんの歌声を再現し、本人は一切歌ったことのない新曲「あれから」を披露した。紅白でも歌うらしい。
使われたのは「VOCALOID:AI」というヤマハの歌声合成技術。
「故人を蘇らせる」ということを世の中の人が実感できる程度のクオリティーを見せつけ、さまざまな議論を生みました。
きりたんDB
音声の研究に使える音声サンプル集「東北きりたん歌唱データベース」が公開されました。
東北きりたんの歌声を収録したDBです。これまでの歌唱DBは著作権法の関係で童謡や民謡ばかりだったようですが、きりたんDBは今時のポップスを歌ったDB。今時な歌い方をするAIシンガーを構築するための素材が世に現れました。
音声の研究室と声優事務所のコネクションの前例にもなった。
その他歌声合成
EmVoiceいろいろ
音声クオリティーがめっちゃ高い英語歌声合成EmVoiceは、今年激動でした。
まずはWindows版の公開。もともとMac専用アプリでしたが、Windowsでも動くようになりました。その後、1.5オクターブだった音域が2.5オクターブにまで広がり、かなり使いやすくなった。
んですが、最近2万円の有料版が出まして、無料版は0.5オクターブしか使えなくなったのです。
音声からすると4万円くらいの価値があるが、操作性からすると-4万円くらいの価値があるので、個人的には0円で使いたかった。
その他、「クラウドで動くのに買い切りってどうなの?」「MIDI読み込みできない」「重要な発音がない」「開発者がボカロとかをDisってた」などさまざまあり軽く炎上してました。
SynthV 五維介質
SynthVでは、中国の平行四界が「五維介質」シリーズの中国語ライブラリを4本リリースしました。
熱量系の「赤羽」、ロリ「詩岸」、お姐さん「蒼穹」、くらげ「海伊」が登場し、結構売れてるらしい。キャラは人気だし歌声はクオリティー高いし、とてもうまくいってそう。
私は買い物がうまくいかなくていつまでたっても海伊が届かない状況にある。
DeepVocal
音源を自作できる歌声合成DeepVocalが登場しました。Sharpkeyを作っていたBoxstarさんが新たにリリースしたDeepVocalは、Sharpkeyの機能を少し減らして、音源制作ツール「DeepVocalToolBox」を追加したもの。
音源制作可能な歌声合成ソフトとしてはクオリティー高いほうなので一部で結構人気を博している。
私の観測範囲では、中国勢とうたけも勢の間で結構活発に使われている印象。
MUTA 未央
中国のCeVIOっぽい歌声合成ソフト「MUTA」に両声類男声音源(概念)の「未央(みお/WeiYang)」が登場しました。低音は爽やかに、高音は女性らしく歌います。中の人が両声類らしい。
PaintVoice
オケが作れて4パートのボーカルが作れて動画も作れて直接TwitterなどにアップロードまでできてしまうAndroid用アプリ「PaintVoice」がいつの間にか登場していました。いろいろできすぎて超面白いので一度触ってみてほしい。