AIシンガーの癖をほぼ完ぺきに把握できるテストシーケンス作った

AIシンガーには、キャラごとに個性があります。ピッチの動きも活舌も得意な音域も全部違う。

なので、新しいAIシンガーに出会ったときは毎度「このAIシンガーは何ができて何が得意なのか」を探らないといけない。どういうシンガーか見極めないと、そのキャラのための適切な楽譜が作れないんです。

そこで、癖をほぼ完ぺきに把握できるようなテストフレーズ(要するにベンチマーク)を作ったので配布します。

AIシンガーの癖とは

AIシンガーの癖というのは「母音が連続したときには言い直す」「速いテンポの曲を歌わせると噛む」「上昇後の4分音符以上のノートでしゃくりを入れがち」とかそういうやつ。

今回配布する7個のテストフレーズをAIシンガーに歌わせて耳障りの言い範囲を探れば、以下の項目のチェックができる。

・対応子音
・母音脱落
・強弱記号
・調号
・肺活量
・活舌
・音域
・母音連続/メリスマ記号
・テンポ
・歌い癖

ここからDL(G Drive)

例 AIシンガーきりたんの場合

AIシンガーきりたんに↑のテストフレーズを一通り歌わせてみたところ、きりたんの癖はこんなところ。

・対応子音(ConsonantBreath)
歌える音素を調べる。
歌えないのは以下の通り。基本的に拗音に弱い。
にゃ/ひゅ/みゃ/みゅ/みぇ/みょ/りゃ/ぎょ/びゃ/びゅ/びぇ/びょ/ぴゃ/ぴゅ/ぴぇ/ぴょ/てゅ/でゅ
・母音脱落(CVC)
記号「’」をつけることで母音が落とせる機能「あし’=a sh」の対応状況を調べる。
きりたんができるのは、
く/し/す/ち/つ/ぬ/む/ゆ/わ/ぐ/ど/ぶ/ぷ/は/ひ/ふ/へ/ほ/ヴ
・強弱記号(FortePiano)
pp~ffまでの強弱記号に対応しているか調べる。
AIシンガーきりたんというか、NEUTRINO(on sigさんエディター)は非対応。
・調号(Key)
同じフレーズで、調号だけ書き換えた場合に変化があるかどうかを調べる。
AIシンガーきりたんは多少変わるが、誤差程度。
・肺活量(LongtoneFastpassage)
ロングトーンの安定度を調べる。
きりたんは
8秒=タイミング推定ミス、ピッチ不安定
2秒/4秒=ピッチ不安定
1秒=安定
・活舌(LongtoneFastpassage)
速いパッセージが歌えるかどうか調べる。
きりたんはBPM120で
1/4=四分音符~1/12=八分3連は可能
16分音符がギリギリ
・音域(RangeVowel)
得意音域、可能音域を調べる。
きりたんは
得意音域=B3-D5
可能音域=D3-A5
・母音連続/メリスマ記号(RangeVowel)
「ああ」「あー」のように母音が連続するとき言い直すかなめらかにつなげるかを調べる。
きりたんは
母音連続(ああ)=上昇でも下降でも言いなおす
メリスマ(あー)=上昇では言い直し、下降では約半数がなめらか
・テンポ(Tempo)
得意なテンポ、可能なテンポを調べる。
きりたんは
得意域=120-140
可能域=80-180
・歌い癖(Tempo)
D4以上、BPM120で付点八分くらいの長さからはっきりとしゃくるようになる。ロングトーンでのビブラートはほとんど入らない。ハイトーンのフレーズ末ではピッチを跳ね上げる。このフレーズは、おそらく多くの女声音源が得意であるとおもわれる音域(A3-D2)において、リズムは16分から付点四分まで、音程は完全1度から長6度くらいまでをまんべんなく配置したフレーズ。これが歌えればJ-POPはそこそこ歌える。これが歌えないとそこそこ厳しいというラインにしている。

なぜこの検査項目なのか

音域や対応テンポは歌声合成ソフトの基本スペックなので当たり前にあるが、それ以外の項目はこの半年以上の間、AIシンガーを触ってきて「調べるべき」と思った項目たち。

対応子音は、カバー曲の選曲や作詞に役立つ。きりたんに「秒針を噛む」を歌わせるのは難しいだろうと秒で判断できる。

母音脱落は英語や早口への適性がわかる。「Faster」と歌わせるには「ふぁす’たー」と打ち込めばいいが、これができないなら英語には向いてない、ということ。

強弱記号、調号はキャラ単位でなく歌声合成ソフト単位で調べればいい、いじって変わるならいじるべきだとわかるし、いじってバグるならいじらないほうがいいとわかる。

肺活量も選曲や作曲に役立つ。何小節でフレーズを区切ればいいか、ロングトーンはどこまで出せるか。AIシンガーは人に近い分、VOCALOIDのように何小節も続くようなロングトーンが出せないので重要な観点になる。知らずに作曲すると曲ごと作り変える羽目になりかねない

AIシンガーは早いパッセージを歌わせると噛む。どこまでなら対応できるかを見極めれば作曲や選曲の基準にできる。

母音連続とメリスマ記号は、経験上必要だと判断して入れている。AIシンガーごとに「ああ」をなめらかにつなぐ奴、区切って発音する奴、かなりはっきり区切る奴、「あー」ならなめらかに歌う奴など本当にさまざまで、これは完全に把握しておかないとまず歌詞入力ができない。試行錯誤に余計な時間がかかる。例えばきりたんの場合なら「上昇形はノートを分割せず、後でピッチを描くべき。下降系はひとまずメリスマ記号で分割しておいて、ダメならノートを統合する」という方針を立てられる。

歌い癖はもうわけわからない。これは実際に既存曲を何曲か歌わせてみて把握したほうが速い。アイドル声優っぽいのか、歌うま女子高生っぽいのか、おねぇさん声優っぽいのか、同人歌手っぽいのか、カラオケ女子大生っぽいのか、美空ひばりっぽいのか。それ次第であてがうべき曲がかわる。

要するにいろいろ考えて作っているのだ。
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