AIシンガーには、キャラごとに個性があります。ピッチの動きも活舌も得意な音域も全部違う。
なので、新しいAIシンガーに出会ったときは毎度「このAIシンガーは何ができて何が得意なのか」を探らないといけない。どういうシンガーか見極めないと、そのキャラのための適切な楽譜が作れないんです。
そこで、癖をほぼ完ぺきに把握できるようなテストフレーズ(要するにベンチマーク)を作ったので配布します。
AIシンガーの癖とは
AIシンガーの癖というのは「母音が連続したときには言い直す」「速いテンポの曲を歌わせると噛む」「上昇後の4分音符以上のノートでしゃくりを入れがち」とかそういうやつ。
今回配布する7個のテストフレーズをAIシンガーに歌わせて耳障りの言い範囲を探れば、以下の項目のチェックができる。
例 AIシンガーきりたんの場合
AIシンガーきりたんに↑のテストフレーズを一通り歌わせてみたところ、きりたんの癖はこんなところ。
なぜこの検査項目なのか
音域や対応テンポは歌声合成ソフトの基本スペックなので当たり前にあるが、それ以外の項目はこの半年以上の間、AIシンガーを触ってきて「調べるべき」と思った項目たち。
対応子音は、カバー曲の選曲や作詞に役立つ。きりたんに「秒針を噛む」を歌わせるのは難しいだろうと秒で判断できる。
母音脱落は英語や早口への適性がわかる。「Faster」と歌わせるには「ふぁす’たー」と打ち込めばいいが、これができないなら英語には向いてない、ということ。
強弱記号、調号はキャラ単位でなく歌声合成ソフト単位で調べればいい、いじって変わるならいじるべきだとわかるし、いじってバグるならいじらないほうがいいとわかる。
肺活量も選曲や作曲に役立つ。何小節でフレーズを区切ればいいか、ロングトーンはどこまで出せるか。AIシンガーは人に近い分、VOCALOIDのように何小節も続くようなロングトーンが出せないので重要な観点になる。知らずに作曲すると曲ごと作り変える羽目になりかねない。
AIシンガーは早いパッセージを歌わせると噛む。どこまでなら対応できるかを見極めれば作曲や選曲の基準にできる。
母音連続とメリスマ記号は、経験上必要だと判断して入れている。AIシンガーごとに「ああ」をなめらかにつなぐ奴、区切って発音する奴、かなりはっきり区切る奴、「あー」ならなめらかに歌う奴など本当にさまざまで、これは完全に把握しておかないとまず歌詞入力ができない。試行錯誤に余計な時間がかかる。例えばきりたんの場合なら「上昇形はノートを分割せず、後でピッチを描くべき。下降系はひとまずメリスマ記号で分割しておいて、ダメならノートを統合する」という方針を立てられる。
歌い癖はもうわけわからない。これは実際に既存曲を何曲か歌わせてみて把握したほうが速い。アイドル声優っぽいのか、歌うま女子高生っぽいのか、おねぇさん声優っぽいのか、同人歌手っぽいのか、カラオケ女子大生っぽいのか、美空ひばりっぽいのか。それ次第であてがうべき曲がかわる。