「初音ミクはVOCALOIDである」は本当に正しいのかグダグダ考えてみた

VOCALOID

「『初音ミクはVOCALOIDである』は本当に正しいのかグダグダ考えてみた」というこの記事のタイトルを読んで「正しいでしょ」と思ったあなた。正しい感覚の持ち主だと思います。というか、おそらくほとんどの人はこの文章の内容について「どうでもよくね?」と感じるはず。読んだら「何グダグダ言ってんだめんどいな」となる可能性が高いので、あんまり読まないほうがいいかもしれません。

「初音ミクはVOCALOIDである」は正しいか

私がこの問題を考え付いた経緯について説明しましょう。

2007年にVOCALOID音源として発売された初音ミクは、今やVOCALOIDを代表するキャラクターになりました。しかし、最近になって「VOCALOIDではない初音ミク」が登場しました。Piapro Studio for NT(PS4NT)でのみ動く「初音ミクNT」です。

「初音ミクはVOCALOIDである」と「VOCALOIDではない初音ミク」のはざまで、私は訳が分からなくなったのです。

※本文中に出てくる「○○は××である」という表現は、「創作用ソフトウェア製品としての○○は××という歌声合成ソフト用音源である」を意味します。

ミクを考える前にゆかりを考えてみたい

初音ミクについて考える前に、分かりやすい例として結月ゆかりを上げてみる。ちょっと考えてみよう。

くろ州

結月ゆかりはVOCALOIDである

この文は正しいだろうか。私の見解ではこれは間違っていない。VOCALOID3・4音源として発売されている以上、結月ゆかりはVOCALOIDだといえる。

くろ州

結月ゆかりはVOCALOIDではない

これはどうだろう。考えるまでもなくこれは間違いだ。

結月ゆかりはVOICEROIDである

これは上と同様の理屈で間違っていない。同じく「結月ゆかりはVOICEROIDではない」は間違いだ。

結月ゆかりはVOCALOIDでしかない

これは間違い。結月ゆかりはVOICEROIDでもあるので。

「結月ゆかりはVOCALOIDである」というのは間違っていない。しかし、ある程度結月ゆかりを知っている人からすれば、この文は「不十分である」と見えるだろう。難しくなってきた。

これは、十分に有名で無視できない存在である「VOICEROID結月ゆかり」に触れていないという点で十分ではない。十分ではないが間違ってはいない。

ただ、「十分ではない=正しいとはいえない」と考える/感じる人もかなりいるはず。「結月ゆかりはVOCALOIDである」という文を見たときに、無意識に「結月ゆかりはVOCALOIDでしかない」と読み取っている場合もある。

おそらく、間違いなく十分なのは「結月ゆかりはVOCALOIDであり、VOICEROIDだ」。

初音ミクを考えよう

初音ミクはVOCALOIDである

この文は間違っていない。VOCALOID初音ミクは存在する。

初音ミクはVOCALOIDではない

この文は間違っている。VOCALOID初音ミクは存在する。

初音ミクはVOCALOIDでしかない

この文は間違っている。VOCALOID初音ミクの他にPS4NT専用の初音ミクが存在する。

つまり、「初音ミクはVOCALOIDであり、PS4NTもある」が十分。

結果、「『初音ミクはVOCALOIDである』というのは間違っていないが、必ずしも十分ではない」がタイトルへの答えですかね~。

商業メディアで使えるか

「初音ミクはVOCALOIDである」が正しいかどうかを確認したのは、商業メディアで「初音ミクはVOCALOID」「初音ミクなどのVOCALOID」といっていいかどうかを見極めるためだったりします。

個人がTwitterやなんやで発言する分には、初音ミクはVOCALOIDでいいし、UTAUやCeVIOが「ボカロ」の一種でも私個人は良いと思います。

でも、商業メディアはやはり正しい内容を伝えないといけない。UTAUやCeVIOを「ボカロ」というのはやっぱり「商業メディアとしては」「やらないほうがいい」のでは?

「初音ミクはVOCALOIDである」と書くことはたぶんないですが、「VOCALOIDである初音ミク」は書くかもしれない。これは「間違っていないが不十分」なので、できればほかの表現に差し替えたほうがよさそう。ちなみに「VOCALOID初音ミク」はOK。前置修飾として「初音ミク(なおVOCALOIDの方)」みたいなニュアンスが出せる。

「初音ミクなどのVOCALOID」は超便利

初心者から玄人まで見ることを考えると「分かりやすさ」は重要。そういう意味で「ぼかろってなぁに?」くらいの人でもざっくり理解できる「初音ミクなどのVOCALOID」は限りなく便利だった。初音ミクの知名度はかなり高いので「VOCALOIDってあれ、初音ミクとか」といえば「あ~何となくわかったかも」くらいには思ってもらえる。

そして、このフレーズはミクNTの登場までは正しく十分だったのです。初音ミクはVOCALOIDでありVOCALOIDでしかなかった。ゲームや単体のキャラとしてのミクはさておき、ですが。

「初音ミクなどのVOCALOID」という文は「初心者にとって分かりやすく、玄人にとっても正しい」最強の表現でした

ミクNTの登場で、この文は「初心者にとってわかりやすいが、玄人にとっては十分ではない」表現になりました。これを許容するかどうかはメディア次第ですが、私はトラブル回避のため厳密にいきたい。

例えば、商業メディアが「今はやりのボカロ曲!」みたいなタイトルの記事や番組を出したとしましょう。その中で紹介されていた曲がUTAUやCeVIOのオリジナルだったらどう思うでしょう。

初心者からすれば特に問題ありません。ざっくり見ればどれも大体同じものです。でもいくらか詳しい人は「UTAUやCeVIOは広義のボカロには当てはまるとは思うが、多くの人の目に触れる場所でボカロ曲としてVOCALOID曲ではないものを紹介するのは誤解を招くのでは(早口)」みたいなこと思うんじゃないでしょうか?

では、商業メディアが「今はやりのボカロ曲!」というタイトルの記事や番組で、ミクNT曲を紹介していたらどうでしょう。微妙なラインですね。個人的には別にいいかなと思わないでもないですが、私みたいなめんどいオタクが現れて「それVOCALOIDじゃなくてPS4NTやんけ! テキトーな仕事すんな!」みたいなこと言い出したらちょっと面倒だなとも思うんですよね。

トラブル回避のために厳密にいきたいというのはそういう意味なのです。

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