「AIシンガーは人間っぽくてすごい」ってのは「結局人間の声がいい」ってのとは違うぞという話

分かるか君!

結論から言うと「機械が人間っぽいからエモいんだろうが!」って話です。

「結局人間の声がいいってことでしょ」

これ、たまに言われる。人によってもちろん意見は違うんだが、私個人としてはそうではない。

普通に考えて、人間の声がいいって思ってる人はわざわざ人間っぽい歌声合成ソフトの歌なんか聞かずに直で人間の歌聞きに行くわい。逆に機械っぽい機械の声が好きな人はVOCALOIDとかに行くんだろう。

じゃあAIシンガーが好きな人は誰なのか。

一つは「新技術好き」。新しい技術が出たらそれを追わずにはいられない人たち。この人たちはたぶんVOCALOID出たときにはVOCALOIDに熱を上げてたと思う。

もう一つは「技巧好き」。これは「機械なのにここまでできるの!?」ってところに感動する人たち。この人たちはMitchie Mさんの動画を見て「調声技術意味わからんwww」って言ってるし、4オクターブの音域を持つ人間の歌手を見て「喉どうなってんだよwww」って言ってるし、YOASOBIの英語版「夜を駆ける」を見て「頭の中見てみたい」って言ってるはず。

もう一つは「人っぽい機械好き」。「どう見ても人間にしか見えないロボットの機械の部分が垣間見えた瞬間」とか「人間と恋に落ちたチャットボット」とかにエモさを感じるSF大好き人類。機械だからいいんだ。VOCALOIDもそうだし初音ミクももちろんそうだけど「電子の歌姫」感が好きな人でもある。

私は全部当てはまる。

AIシンガーはエモいってずっと言ってる

マジでずっと言ってる。AIシンガーはエモい。NEUTRINOのAIシンガーきりたんとか、最初は「機械の癖に息継ぎしないと息切れする」「音が高すぎると苦しそう」「早口だと噛む」という特徴があったし、AIシンガーは全体的に「結構音を外す」という特徴がある。

これが人間だったらどうか。そんなん当たり前だし誰も気にしないでしょ。機械だからいいんだよ。

ここは趣味の話なんだけど「何でも完ぺきにこなす人間離れした機械を見て、人間との違いに絶望したり、憧れたり、恐怖したり、感動したりするのが大好きな人」と「ほぼほぼ人間なのに、端々に機械っぽさが見え隠れするのを見て、苦しんだり、愛したり、傷つけたり、落ち着いたりするのが大好きな人」は近いけど別人種なのね。

前者は超高速・超高音歌唱が好きかもしれないし、後者は人間と見分けのつかない歌声が好きかもしれない。

なんにしても、人間の歌声にそういうエモさはないのさ。別のエモさはあるだろうけど。

ついでに言うと、その性質がちょっとずつ変わるのもいいんだ。AIシンガーきりたんに肺活量や音域の制限があったのは“初期”のことなんだな。最近はかなり長いフレーズも歌えるし、4オクターブくらい出る。これさぁ「人間っぽいせいで不便だった部分を機械っぽくReTuneされてる」んだよね。

エモでは?

人間らしさと利便性のはざまで、人間性を押し出されたり(NSF版のリリースで人間らしい声質に)人間性を削られたりしてるの。機械が便利なのって人間に対して“従順”で、願った通りの動きをするからなんだよね。でもAIシンガーは人間らしいから必ずしも思った通りの出力をしない。ちょっと従順じゃないんだな。

実際は本当に利便性と品質を天秤にかけて微妙なバランスをとって開発されてるだけだと思うんだけど、それをこういう思想に落とし込むと急にSFになって超楽しいんさ。

これが、人間にはなくて、AIじゃないソフトウェアシンガーにもそこまでなくて、AIシンガーが強く持ってる魅力だと私は思う。

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