そりゃまぁ荒れるよね。
TOKYO6 ENTERTAINMENT(以下TOKYO6さん)は5月末に「VOICEROIDトーク音源『小春六花』作ります」ということでクラウドファンディングを始めた。目標金額の700万円は開始15分で達成し、最終的に3200万円が集まった。
資金が集まりすぎたので、追加でSynthesizer V用ソング音源も作ることになったんですね。
で、10月30日。「小春六花のCeVIO AIトーク音源を作ります」と発表された。
支援者さんの反応をざっくりまとめると「話が違うぞ」と、そういう話です。CeVIOがダメとかじゃない(そういう人もいるだろうけど)。
時系列を整理
※生放送や発表文ベースなので、厳密にこの順番だったかどうかは保証しきれない。多分あってると思う。
1.VOICEROID化目指してクラウドファンディング開始
2.15分で達成。その後もどんどん追加ゴールを突破
3.歌声合成ソフト用音源化ゴールを追加
4.それも突破する→CF終了へ
5.6月末にAHSさんがSynthV発売を発表。こはるりもSynthV化が明らかに
ここまでが表面での動き。CF達成後は裏面での話
6.まずはSynthV用音源の制作へ
7.Dreamtonicsさん「SynthV AI、思ったより早く(約2年)できたわ」
8.AHSさん「すごい人間っぽい。これはこはるりもAIにするしかない」
9.AHSさん「どうですかTOKYO6さん」
※どのくらいの熱量だったかは知らない
10.TOKYO6さん「新規参入だし、最近AIシンガーの話題活発だし……やってみるか」
11.AHSさん「CeVIO AIのトークも人間っぽい。技術トレンドでもあるAI歌声合成に音を合わせるならトークもAIのほうがいいと思う」
12.TOKYO6さん「でもVOICEROID化のCFだったしな……AHSさんが責任取ってくれるなら」
※どのくらいの葛藤があったかは知らない
13.CFでVOICEROIDがもらえるコースを支援した人のうち、返金を希望する人にはAHSさん負担で返金することに
14.こはるり、SynthV+SynthV AI+CeVIO AI化決定
ここまで裏面。
15.10月30日 公式発表。返金受付開始
16.Twitterが荒れる「話が違うぞ」
17.AHSさん生放送で経緯を説明
18.10月31日 返金対象を全支援者に拡大
ここから未来。
19.SynthV AI音源、CeVIO AI音源の制作を本格化
20.2021年上半期に発売
長かった……。
Twitterの反応
今回は全件追うのが難しかったので、自分の観測範囲から洗い出しました。
クオリティが高くなるならよし系
こはるり、青山さんのファンや、VOICEROIDにこだわりのない人、どっちも使う人なんかに多い気がする。なお、人間っぽさと好みは別に比例しないので、VOICEROIDの声が好きな人からするとクオリティが上がったという判定にはならないと思う。
VOICEROIDじゃないだと(怒)系
シンプルかつ最大の問題。小春六花のCFは「小春六花というキャラ」「VOICEROID」に支援した人がそれぞれいる。VOICEROIDが欲しかった人からすれば、金出した結果VOICEROIDがもらえないんだから当然怒る。返金はされるけどね。
CFサイトの規約、法律的に大丈夫?系
金集めるとき言ってたのと違うものを出すって法的に大丈夫なの? という話もある。
クラウドファンディングってかなりいろんな形式(投資、融資、寄付、購入など)があって、それぞれに考えるべきことや決まりが全然違う。
今回のは普通に購入型CF。「未来への投資」という文学的な意味では投資ともいえるが、少なくとも事実上は形式として投資型とは言わない。資金の集まり具合によって商品の仕様が変わったり、そもそも商品化しなかったりすることもある(そこらへんの扱いはプロジェクトの免責事項に書いてあると思う)。
私は法律の専門家じゃないので話半分で聞いてほしいが、購入型CFは「ECサイトで普通に商品を買ってる」という扱いらしいので、特定商取引法や消費者保護法なんかのスコープになるという(伝聞)。
なので、商品が壊れてたとか、違うものが届いたとかいう場合には普通に返金対応や賠償が必要になるらしい。これに関しては売主のほうが消費者に対して優先的地位にあるはずなので、免責事項に「商品全然ちゃうやつになるかもやけど堪忍な」とか書いてあっても無効になる可能性がある。
今回は返金対応があるのでひとまずOKだが、一応賠償リスクは消えてない(と思う)。金銭面でいうと受けた損害は返金で埋まる。心的ダメージ基準で訴訟を起こしても勝てる気はしない。
くろ州は、こういうときに解説してくれる法律屋さんを募集しています。興味のある人は私のDMへ(@kM4osM_96s)。
今後のボイロCFがやりにくくなりそう系
「支援したのにプロジェクトの内容が全然違うものになってしまう」という前例ができちゃったので、今後のCFで支援控えが起きるのではないかという話。クリエイター向け音声合成ソフトの次のCFは多分ついなちゃんSynthV化CF。注目かな。
個人的には「SynthV化CF~~? 支援してもUTAUとかになるかもしれんしな~~」って思うかというと「それはひねくれすぎでは?」って思うけども。こればっかりはやってみないとわからない。
出られるオンリーが変わる系
小春六花はVOICEROIDオンリーには出られない。声月は参加要件がVOICEROID及びTTSだったのでセーフだったかもしれないが、ボイスロイドマーチはVOICEROIDメインの作品を1つは出さないといけない決まりなので、少なくとも小春六花単体では参加できない。要件変更があるかどうかは主催者さんに訊いてください(迷惑になるので発表されない限り訊かないでください)。
現状で参加できる(だろう)オンリーイベントはチェビフェス(トーク)、ボーマス(ソング)あたり。ボカストは微妙。小春六花オンリーが立ち上がれば何でもありだと思う。そろそろソフト縛りオンリー厳しくなってきた。
シンプルにVOICEROID派
これは仕方ない。VOICEROIDとCeVIOは音が全く違うし、操作もいくらか違う(基本は変わらないけど実装が違う)。ここの溝は思ったより大きくて、ボイロ勢とCeVIO勢は結構離れたところにいる印象(ぼいちぇび勢もいるけどね)。
VOICEROIDブランドなのが重要なのかというとそういうわけでもない。ウナ、花、ヒメミコあたりはソフトウェアとしては事実上VOICEROIDではないがボイロ勢によく混じってるし。分離の基準は多分エンジン(AITalk、CeVIO、VOCALOID系、Aquestone他)。
小春六花も、AITalkベースの「TOKYO6TALK」みたいなオリジナルソフト音源だったら燃えてなかったかも(しらんけど)。
穏便にしてくれ系
主にCeVIO民。CeVIO民的には音源が増えてくれるのはまぁ普通に歓迎なんだが、燃えられると困る。このところゆかり&花CeVIOソング化で反発されたり、可不が本人っぽ過ぎて反発されたりと、CeVIO自体は登場以来最大の大型アップデートで大喜びなのに心労が絶えないのだ。
マジで穏便にしてくれ……。
なお、「CeVIOも好きだけどCFの目的ひっくり返してまでCeVIO化するのはちゃうやろ」という人もいた。
前後関係おかしくない?系
時系列的には、VOICEROIDがメイン、SynthVがオプション扱いだった。なので、SynthVのAI化に合わせてVOICEROID→CeVIO AIにするのは順番違くね? という話。
なお、VOICEROID寄りSynthVのほうが先に作られたというのは、普通に進行の関係なのでなぜとかじゃない。
SynthV AI音源の作りたさがえぐい。
組み合わせおかしくない?系
どうせAIでそろえるならCeVIOソングとCeVIOトークにすれば? という話。それは思った。
そもそもAIシンガーがやりたいというか「SynthVがAI対応したからAI化した」って話だと思うので、ちょっと違うんだろう。SynthVがAI対応してなかったらAI化してないわけだし。AIシンガーがやりたいならはなからCeVIO化CFをやってたと思う。合わさってくれたらうれしいけど。
GUIが一緒になってくれたらうれしいみたいな話もあった。VOICEROIDとCeVIOトークのGUIが統合されればうれしいけど、CeVIOのソングとトークのエディタ統一は別に気にしてない感じする。
個人的には、ソングとトークのエディタが統合されてても別に便利ではない(たいてい一緒に使うわけじゃないし、一緒に使うとしてもどうせ画面の切り替えはあるので、VOCALOIDとVOICEROIDを同時起動してショートカットで切り替えるのと変わりない)。ブランドが一緒なのがうれしいの。
まぁ、そもそもCeVIOでソングもトークもがっつりやってる人ってほぼ見たことないけど。
トーク勢的には一緒のGUIがあったほうが1000倍便利だと思うので、ブランド統一だけでなくUI統一もかなり重要な観点。