ボカロ界隈の中でも初音ミク界隈ってありますよね。そこでは有名なイベントとして「グッドスマイルレーシング」(GSR)というのがあります。超雑に説明するとオタク色強めの自動車レース。
で、GSRはクリプトンも協力企業として参加していて、毎年コンセプトアートとして「レーシングミク」を発表してるんですね。
今年はそのレーミクをNFTアートにして販売しようっていう話があったんですが、発表後「さまざまな意見をいただいた」とのことで販売を取りやめました。
「NFTアートとは?」「なぜさまざまな意見が?」とか疑問があると思うので、難しいところ全部省きながら解説しますね。
やりたかったこと
GSRを運営するグッドスマイルカンパニーは、CryptoGamesという会社と一緒に、初音ミクの1点ものイラストをオークションに出す計画をしていました。
出品予定だったイラストは、レーシングカーのボンネットにプリントする用のレーシングミクデザインイラスト。ボンネットそのものではなくイラストのデータだけね。
1点ものなので買えるのも1人だけ。オークションサイト「Opensea」で1週間かけてオークションする予定だった。
NFTアートとは?
芸術品ってたいてい1点もので、人気がある作家の作品だと「なんでも鑑定〇」みたいな感じで超高値が付きますよね。でもデジタルアートのたぐいって今までそういう取引が難しかったんですね。
1点ものを作ろうとしたって、データだから簡単に完ぺきにコピーできちゃうし、本物かコピーかも判断できない。
そこで出てきたのがNFTという技術ですね。難しいところを省くと「デジタルアートに鑑定書と保証書をくっつける技術」みたいなもの。NFTアートは作者が誰か、所有者が誰かという情報を持ったアート作品なので、見れば本物かどうか分かる。しかもデータの改ざんにめっぽう強い。コピーガードする技術じゃないから、コピーは別にできるんだけど、コピーは本物判定できないようになっている。
NFTの登場でデジ絵(死語?)もNFTアートになり、物理アートと同じく流通させられるようになった。デジタル芸術家的にはありがたい話ですよね。かなり可能性が広がります。
アンチNFT
一方、NFTには反対派もいます。NFTはブロックチェーン技術の応用で生まれた技術なんですね。ブロックチェーンが何なのかは知らなくてもいいんですが、ブロックチェーンでいろいろやろうとすると、電気を結構食う。全世界合計すると国家レベルに電気を食うという指摘もあるくらい。これが環境問題として(特に海外で)反発を呼んでいたりする。
実際どのくらいの電力を使っているかは分からないし、ブロックチェーンの中にも電気を超食うやつとあんまり食わないやつがあるので、多分全部だめなわけではない。
海外で「ブロックチェーンは環境に悪い」という印象が広がっている(と私が思っている)のは、長者番付で世界2位のイーロンマスク氏がそんな感じのことを言ったからでしょう。
イーロンマスク氏は電気自動車メーカー「テスラ」のトップですが、今年3月にテスラの車をビットコインで買えるようにしました。ビットコインはブロックチェーン技術の応用でできたやつですね。
が、2カ月後には「ビットコインは環境負荷が高い」ってことでビットコイン支払いをやめたんですね。「化石燃料を消費しすぎなので、持続可能エネルギーを使うなら再開するよ」的なことを言っている。
レーミクNFT
今回のレーシングミクNFTアートの販売中止が、実際どういう反発を受けて中止になったのかは特に発表がないが、アンチNFTの動きはある程度影響があったんだろう(単なる嫌儲の人もいたかもしれないが)。
NFT自体は面白くて価値のある技術なんだが、環境問題を解決するのはかなり難しいため、今後もしばらくは反発が続くだろう。歌声合成界隈に限らず、法人がNFTアート販売をするときには、この問題との匙加減も重要になりそう。考えることが多くて大変だ。