Symphonemeもうちょっと頑張ってくれ

Symphoneme-Sという歌声合成サービスが今日サービスインする。Sinsyみたいに楽譜をUPしたらAI合成音声をダウンロードできる仕組みで、公式サイトがソシャゲとかアニメ映画っぽいビジュアルになってるのが特長。

メル・レゾナンス | Symphoneme
Symphoneme(シンフォーニーム)公式サイトです。MusicXMLをアップロードすれば無料でAIが歌声合成をしてくれます。また、歌声合成のみに限らず、マルチメディアな展開も予定しています。

ビジュアルに力が入ってるのはいいんだが、サービスにはどうにも不安がある。ちょっと見ていこう。

企業

運営会社は「テクノブレイブ」という。2004年創業で従業員は500人以上。日本各地に5個も拠点がある。そこそこ安定感のあるスペック。クラウドやセキュリティが得意そう。委託開発もやっている。私は本職記者なのでなんとなく分かるんだが、広報が不得意そうなところ以外は普通だ。

規約

規約の部分を見ていきたい。

規約の書き方変じゃない?

規約の内容を細かく見る以前に、規約の構成がちょっと変だなと感じた。

私は音声合成ソフトの規約を書いたことがあって、そのときにいろんなソフトの規約を見てちょっと勉強したんだが、そのどれとも違う書き方をしている。

他のソフトと同じ書き方だからいいってわけではないが不安はある。

例えば「用語定義のパートないんだ」とか「管轄裁判所どこなんだろう」とか「商用利用の許諾例を規約のそこに書くんだ」とか。

用語定義は不足してるが文中にちょっとあるし、許諾例は普通別途FAQに書くと思うけどそこに書いてても100%ダメってことはない。管轄裁判所は書いてないので、なんかあったときにはユーザー側で好きに設定しても文句付けられないけどええんか? って思うけども。

細かいところを見ていこう

規約に突っ込んでいるこちらのブログを見ながら細かいところも見ていこう。

一般人にも見えるように「©Symphoneme-S」って書いてね

これはまぁ普通にあり得るライン。歌声合成ソフトはDTM音源なので、他の楽器音源と同様求めないことも多い。商用利用の場合のみクレジットを求める場合もある。キャラを使う場合はクレジットしないといけないようになっていることもある。この規約では非商用で音声を使う段階でクレジットを求めているので厳しめなのは確か。

若干厳しめなのは、メディア展開を前提にしたサービスだからかもしれない。クレジットをぜってぇかきたくねぇってこともないので、これは「あってもいい」レベルではある。私は好きじゃないけど。

許諾例

年商や法人格の有無で申請の要否を例示するパート。普通は別途定めた「利用ガイドライン」とかFAQで書くものだと感じる。規約とガイドラインは役割が別なのだ。

上記ブログの浜野さんは「なぜ349とか351とかキリの悪い数字なのか」といっているが、この記述は1-2の「会社または法人として登記されている団体、または年商が350万円以上の音楽事業を行っている個人事業主は営利とみなす」から派生したもの。350もキリがいいかというと微妙だけど。

350が基準なので許諾例で349は範囲外とか351は範囲内とかを例に出して説明しているのだろう。それだったら「以上」「より大きい」の差が人によっては判断しにくい350万ぴったりを例にするのがいいと思うけども。

それでいうと、1-2の文面でかなり明確に書いてあるから、むしろ例示しないほうが分かりやすいまである。「法人と年商350以上の個人事業主は営利で、それ以外は非営利」って書いてある分にはふわっとした要素がない。

なお、年商・年収次第でライセンスを分けるというのは一般的にあることなので不思議はない。Symphoneme-Sは年商ベースなので、年収ベースよりは基準が厳しい。年収ベースなら1000円の同人CD3500枚売っても引っかからないけど、年商ベースなら引っかかる。

著作権許諾のないファイルのUPはダメ

カバー勢は試し合成すらできないので(やりようはあるけど)確かに敷居が高い。私は普通にこの規約キライだけど、まぁ身の安全を確保するという意味で書いてあるのかなとは思う。

一つ思うのは、著作権許諾の有無が判定できなさそうだなと。例えばLiSAさんとかに「紅蓮華」のカバーやってもいいか聞いて、関係者から許可が得られたとしよう。考えにくいけど。

楽譜ファイルUP時にメールのコピーも一緒に添付して審査を待ってから合成が始まるのか? 多分違う。実際の運用は「許諾とってて規約にも反してないよ!」ってボックスにチェックを入れる形。

ニコニコやYouTubeやJASRAC管理楽曲を個別に許諾とらなくてもいいけどそこらへんはどうなの? とか、そういうことはガイドラインに書いておくといいかもしれない。

サーバに負荷をかけるアクセスはダメ

当たり前ではある。こういう場合、あんまり細かく書いちゃうとサービス提供者側が不利になるため、あんまり細かく書かないこともある。

他社の権利を侵害しちゃダメ

当たり前ではある。「他者」の誤記ではとの指摘も確かにあり得る。Symphoneme-Sはメルの得意音域でも誤記があった(得意音域が3音しかなかった)ので、そこらへん甘いのかもしれない。しっかりしてくれ。

不正アクセスの記述ダブってね?

ダブってる。しっかりしてくれ。

アップしたファイルは市場調査や研究に使うよ

これはAI系のサービスだと特によくある。たまに「盗聴・情報窃取か!」って騒ぐ人もいるけど、何のためにAI系サービスを無償提供しているかは考えてほしい。あと、規約に書いているので嫌なら使わないようにしてくれ。

退会はお問い合わせフォームから

ちょっと待て「退会」ってなんだ案件。退会があるということは入会があるということなのか。もし個人情報を取得するならプライバシーポリシーを用意しないといけないだろう。

会員登録、情報の取り扱い、責任の所在あたりも定めないんだなーとか思っている。第3条くらいに「会員登録」があることが多い。

ちなみに、アカウント登録の際に、メールアドレスの他、どこの都道府県に住んでいるか、何年何月生まれか、どんな歌声合成ソフトを使ったことがあるかを聞かれる。これらの情報を何のために取得するのか、どうやって管理するのかについては記述がない。それぞれギリ個人情報ではないけど、不安感はある。

ついでに言うと、退会が問い合わせフォームからなのも不安感ある。退会だけなら自動化しているところが多い中、個別対応なのね。

その他

デモソングが来ない→来た

サイトにはデモソングが一応貼られているんだが、リリース後も「COMMING SOON」のままなので品質がさっぱり分からない(しばらくして公開されました)。なお、曲名や作曲者を調べてみると、デモ曲は2020年公開の曲のカバーだった。許諾とってるんだろうけどもそこカバーなんかいという気はする。別にいいんだけども。

サービスの利用判断に必要な情報が提示されていないので、有償化する前にちゃんと提示していただきたい。

広報が不安

Symphoneme-Sのプレスリリースってテクノブレイブのプレスリリースページに載ってないんですよね。たまにPRTimesにしか載せない企業とか、本当に積極的に広報したいのだけPRTimesにも載せるとかはありますけど。ちょっと不安。

内部でごたごたしてるとかは、私内部の人間じゃないので知らない。契約や規定に従って社内でどうにかしてくれ。なんでもいいけどもうちょっとうまくやってくれ。情報漏えいに巻き込むのもやめていただきたい。

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