AHSさんが発売するSynthV Proにはいろんなエディションがあります。エディターだけとか、音源だけとか、エディター音源セットとか。
音源だけ買った場合でも、簡易版エディター(Synthesizer V Studio Basic)がついているので、最低限歌わせられるんですよね。
「金ないし、歌わせられるんなら音源だけ買おうかな」って人もいると思うので、今回はBasicエディターがどれくらい使えるか見てみましょう。
BasicとProの違い
BasicとProの違いをとりあえずカタログスペックで見ていきましょう。
Basic | Pro | |
値段 | 0円(付属品) | 約1.4万円 |
トラック | 3個まで | 好きなだけ |
合成の速さ | ふつう | はやい |
自動調声 | ない | ある |
プラグイン | 動かない | 動く |
4トラック以上使いたい人と、自動調声がないと無理って人以外は多分普通にどうにでもなる。
3トラックというのは「オーディオトラック込み」の数字。なので「茜+葵+ハモリ」とか「茜+葵+オケ」とかになる。複雑な曲じゃなければ別に問題ない。Windows版UTAU民ならBasicでも特に文句はないはず。
自動調声機能は、今までVOCALOID5とかUTAUプラグインくらいにしかなかったので、今までそういう機能を使ってなかった人はなくてもいいと思う。
なお、Proは「エディターが自動調声に対応してる」だけなので、音源側が対応してなかったら自動調声できない。今のところ対応してるのは琴葉姉妹とSaki(フル版)だけ。
プラグインはProじゃないと使えないが、今はプラグイン誰も作ってないし、なくても今までのSynthV程度には使えるので、プラグインなしで実際に使ってみても別に困らなかった。
実際に使ってみた
なんもわからん人向け
初めて歌声合成ソフトに触れる人にとっては簡単に使えるソフトだと思う。見た目がかっこよくて機能が多そうに見えるが、機能なんて使わなくても歌は歌わせられるのでOK。使いながら慣れていけばいい。
「どうしても自動調声機能が欲しいんや!」って駄々こねるタイプでもなければ、Basicでもそんなに問題ない。ただ、Proを買わない理由が「節約したい」以外にないなら、エディター音源セットを買えばいいと思う。
SynthVユーザー向け
第1世代SynthVでできることは(トラック数制限以外は)だいたいできる。GUIの見た目は変わっているが、右端にあるツールバーの見方さえわかれば第1世代と同じようにできる。ショートカットキーも大体そのまま。音は聴きやすくなった。
なくなった機能は、グロウル/エッジボイスを作る機能と、母音遷移。これらをめちゃくちゃ使うタイプの人はつらいと思う。
CTRL+Bで呼び出せるノートプロパティー、これまでは上から下まで全部映ってなかったので、ピッチいじって子音の長さを変えて……とやろうとするとちょっとめんどかった。第2世代GUIでは全画面映っているので比較的楽。前後のノートをいじりたいときは「前へ/次へ」ボタンを押せばいいのもいい改善。
合成した波形の表示ができるので子音を伸ばしたり縮めたりするとき便利。ただ、そもそも子音があんまり伸びない。
VOCALOIDユーザー向け
VOCALOID5のスタイル(自動調声)機能は使えないが、それ以外なら大体どうにかなる。イメージとしては「VOCALOID4Editorにピッチカーブを直接編集する機能が付いた」くらいの感じ。
ノートを打って、歌詞を入れて、ピッチを描いて、声質パラメーターをいつも通り書けばとりあえずいつも通りくらいのクオリティーは出る。
ピッチの描き方は、VOCALOIDと同じMIDI式と、CeVIOのようにピッチカーブを直接描く方式、UTAUのように制御点を打ってコントロールする方法がある。ノート分割はカッターツールとかないのでめんどい。基本はピッチカーブを描くことになる。
トラックが3つまでなのは普通にきついが、自動調声はVOCALOID5とSachikobushi以外に使ってないと思うので、別になくてもいいかなと思う。
UTAUユーザー向け
トラックはWin版UTAUの3倍使えるので余裕。オートピッチ描くやつとか、最強プラグインの自動調声機能を使いまくってる人はProのほうがいいと思うが、そうじゃないならBasicでも特に問題はない。ちなみに、プリフィックス(音階切り替え)の機能があるので、裏声とか作りやすいぞ。
おそらくUTAUの人が気になっているのは制御点でのピッチ調声じゃないかと思う。第2世代SynthVの制御点は「ダブルクリックすると制御点が追加されてD&Dで移動できる」というもの。ピッチカーブを右クリックするよりは手数が少ない。
あと、パラメーターを描くのに使う「ラインツール」というのがあるんだが、これが「拡張ピッチプラグインのサイン」と似た機能なので、基本はこっちを使ったほうが早いと思う。なお「直線/R/J」みたいな細かな制御点コントロールはない。
プラグイン開発にしか興味ないタイプの人はノータイムでProを買ってください。
歌うボイスロイド勢向け
歌ボ(KotonoSync利用)と似ている点はさっぱりないので逆に安心していいと思う。普段打ち込みに使っているツールの項目(↑)を見てBasicでも大丈夫そうならOK。
歌ボ(琴葉姉妹Lovers)的には「いかに姉妹を演出し分けるか」が重要かと思う。SynthVには音源プリセット機能があるので、そこで「茜は強めで大げさに歌う」とか「葵は息っぽくまじめに歌う」とかいう設定をすればいいんじゃないかと思う。設定の値は各自で研究して。