歌声を合成するときによく使う表現技法「ビブラート」。実はこれ、ソフトによってかなりGUIの作りに個性があるんですね。ピッチや音量は1~3種類しかGUIの違いがないのに、ビブラートだけは5個も6個も実装手法がある。
シンプルに面白いので分類してみました。
ビブラート
ビブラートというのは「ピッチを周期的に上下させる表現」のことですね。ざっくりいうと。ビブラートを構築する要素は以下の通り。
物理の授業かな?
これらをコントロールするのが「ビブラートを作る機能」です。
ではソフトを分類していきましょう。
ポップアップ型
ビブラートをかける位置を指定(した後選択)するとポップアップやウィンドウが開いて細かい設定ができるタイプです。該当するのはこれら。
例えばVOCALOIDは、ノートの下にあるバーをドラッグアンドドロップしてビブラートの長さを指定。ダブルクリックすると設定ウィンドウが出てきて、周波数と振幅を設定する。
このタイプは位相をいじれないことも多い。
グラフ型
ビブラートをコントロールするパラメーターを手描き・指定するタイプ。該当は以下の通り。
例えばCeVIOはこんな感じでコントロールする。
CeVIOでビブラートを作るときによくやる方法
VIA=ビブラートの振幅 pic.twitter.com/QqxRgYFDsg
— くろ州=N種の歌声合成で○○ (@kM4osM_96s) June 5, 2020
これもまた位相をコントロールするのはあまり得意ではない。ただ、このタイプは唯一「ノートにまたがってビブラートを掛けられる」という特徴がある。結構便利。
ポップアップ型との違いはポップアップが出るかどうかくらいしかなく、できることはほぼ一緒。
ポップ・グラフハイブリッド型
ポップアップ型とグラフ型のハイブリッド。基本はポップアップ型と同じだが、振幅だけグラフ型のように操作できるもの。
SynthVは位相を高度にコントロールできる歌声合成ソフトの一つ。
魚雷型(UTAU型)
UTAUで採用されているスタイル。
この三角と四角でできたやつを俗に「魚雷」と呼ぶ。これが最強で、魚雷だけで「長さ/振幅/周波数/位相/ピッチの上ずれや下ずれ」まですべてコントロールできる。天才。
基本的にはUTAUとその派生ソフトで使えます。
外部型
歌声合成ソフト内にビブラートをコントロールする機能がなく、外部ソフトでビブラートを作る。さらに細かく「MIDI型」と「オーディオ型」に分かれる。
外部型(MIDI)
DAWでCC(モジュレーション)を使ってビブラートをコントロールするもの。
Alter/EgoとAquestoneには周波数のみ搭載。CCのModで振幅をコントロールする。SF2RenoidはSF2再生プラグインによって変わる。
外部型(オーディオ)
音声を書き出した後でVocalShifterやWAVES Tuneなどのピッチ編集ツールでビブラートを作るもの。
多分これが最も普通。身もふたもない言い方をすると「ビブラートを編集する機能はない」ソフトです。ノート分割で無理やりやる方法はないでもないが、外部ソフトを使ったほうが38倍速くできる。
ピッチ型
ビブラートをピッチカーブとして手描きするもの。ビブラートを作るのに特化した機能はないが、ピッチを編集する機能はあるので、ピッチで描くことになるやつ。
Sinsy型
特殊型です。「合成前にビブラートの強度は指定できるが、どこでどのようなビブラートが出現するかはそのとき次第。合成後は外部のピッチ編集ソフトでビブラートを作る」タイプです。